【高血圧】降圧薬配合剤の一覧表【2022年版】
1.併用療法における降圧薬の組み合わせ
異なるクラスの降圧薬を併用したほうが、同一薬の倍量投与よりも降圧効果に優れることが示されています(Wald D. S, et al. Combination therapy versus monotherapy in reducing blood pressure: meta-analysis on 11,000 participants from 42 trials. Am J Med. 2009;122:290-300)。
現在日本で使用可能な降圧薬同士の配合剤は、以下の3種類です。
①アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)+カルシウム拮抗薬
②アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)+サイアザイド系利尿薬
③アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)+ネプリライシン阻害薬
- アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)+カルシウム拮抗薬
ARBとカルシウム拮抗薬の併用は、ARB+利尿薬と比較して高尿酸血症の副作用の出現率が低いことが示されています(Ogihara T, et al. Combinations of olmesartan and a calcium channel blocker or a diuretic in elderly hypertensive patients: a randomized, controlled trial. J Hypertens. 2014;32:2054-63)。比較的安全に使用できる組み合わせです。
- アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)+サイアザイド系利尿薬
ARBとサイアザイド系利尿薬の組み合わせは、薬理学的なメリットがあります。ARBは高K血症になりやすいのに対して、サイアザイド系利尿薬は低K血症になりやすい特徴があります。そのため両者の併用は、血中K値を保ちやすいという利点があります。
- アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)+ネプリライシン阻害薬
ARBとネプリライシン阻害薬の組み合わせにも薬理学的なメリットがあります。ネプリライシンを阻害すると、レニン・アンギオテンシン系が活性化します。そのため、ARBを併用することで、この活性化を抑制することができます。
ネプリライシン阻害薬には単剤がなく、ARBとの配合剤しかありません。その理由として、「ネプリライシン阻害薬はACE阻害薬との併用により血管浮腫が出現する可能性があり、ACE阻害薬との併用を防ぐためにARBとの配合剤にしている」という話もあるそうです。
ネプリライシン阻害薬は高血圧の第一選択薬ではありません。しかし、Ca拮抗薬、ARB、利尿薬を使用した後でも降圧不十分な場合、4剤目・5剤目の降圧薬として有用であることが示されています。
2.配合剤になっている降圧薬
・アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)
ARBには、アジルサルタン(アジルバ®)、オルメサルタン(オルメテック®)、テルミサルタン(ミカルディス®)、イルベサルタン(アバプロ®)、カンデサルタン(ブロプレス®)、バルサルタン(ディオバン®)、ロサルタン(ニューロタン®)があります。この全てで配合剤があります。
・カルシウム拮抗薬
配合剤があるカルシウム拮抗薬は、アムロジピン、アゼルニジピン、シルニジピンです。配合剤として、最も多く採用されているのはアムロジピンです。
アムロジピンは血中半減期・作用持続時間が長いことが特徴です。効果の発現も緩徐なため、反射性な交感神経活性化やレニン・アンギオテンシン系の活性化を生じにくいのも利点です。アムロジピンは最もよく使用されているカルシウム拮抗薬であり、配合剤としても多く採用されています。
・サイアザイド系利尿薬
サイアザイド系利尿薬で配合剤に採用されているのは、ヒドロクロロチアジドとトリクロルメチアジドの2種類です。
・ネプリライシン阻害薬
日本で使用可能なネプリライシン阻害薬はサクビトリルしかありません。そのため、配合剤として使用されているのもサクビトリルのみです。
3.配合剤を使う理由
配合剤を使用すると、服薬錠数が少なくなります。そのため、アドヒアランスの改善が期待できます。
さらに、配合剤を使用した方が、降圧目標値の達成率が上がることも示されています。
高血圧治療ガイドライン2019でも、配合剤の使用が推奨されています。
4.配合剤のLDとHDとは
配合剤の商品名の末尾には、‘LD’や‘HD’とよく記載されています。このLDやHDは、それぞれ‘Low Dose’、‘High Dose’のことです。同一成分の配合剤であっても「低用量」のものと、「高用量」のものがあることを意味します。
具体例として、アジルサルタンとアムロジピンの合剤である「ザクラス」を考えてみましょう。「ザクラスLD」はアジルサルタン20mg+アムロジピン2.5mgなのに対して、「ザクラスHD」はアジルサルタン20mg+アムロジピン5mgです。つまり、LDからHDに変更すると、アムロジピンが2.5mgから5mgに増えたことになります。「アイミクス」や「ユニシア」なども同様にアムロジピンの含有量だけが増えます。
ところが、オルメサルタンとアゼルニジピンの合剤である「レザルタス」では異なります。「レザルタスLD」はオルメサルタン10mg+アゼルニジピン8mgなのに対し、「レザルタスHD」はオルメサルタン20mg+アゼルニジピン16mgです。レザルタスの場合、双方の成分が倍量になっています。LDからHDに変更した際、増量される成分は個々の配合剤によって違いますので、注意が必要です。
また「低用量」と「高用量」を区別するための名称は、LDとHDだけではありません。「ミカムロ」や「ミコンビ」の場合はAPとBP、「コディオ」の場合はMDとEXになります。
5.【若手の先生にオススメ】配合剤を用いた高血圧診療
筆者オススメの配合剤を用いた高血圧診療について記載しています。ぜひご覧ください。
6.降圧薬配合剤の組み合わせ一覧
降圧薬配合剤の一覧です。概ね先発品の五十音順に、先発品名・後発品名、成分名を記載しています。
先発品名 | 後発品名 | 成分名 | |
---|---|---|---|
アテディオ | ー | バルサルタン80mg | シルニジピン10mg |
アイミクスLD | イルアミクスLD | イルベサルタン100mg | アムロジピン5mg |
アイミクスHD | イルアミクスHD | イルベサルタン100mg | アムロジピン10mg |
イルトラLD | ー | イルベサルタン100mg | トリクロルメチアジド1mg |
イルトラHD | ー | イルベサルタン200mg | トリクロルメチアジド1mg |
エカードLD | カデチアLD | カンデサルタン4mg | ヒドロクロロチアジド6.25mg |
エカードHD | カデチアHD | カンデサルタン8mg | ヒドロクロロチアジド6.25mg |
エックスフォージ | アムバロ | バルサルタン80mg | アムロジピン5mg |
エンレスト100mg | ー | バルサルタン51mg | サクビトリル49mg |
エンレスト200mg | ー | バルサルタン103mg | サクビトリル97mg |
カデュエット1番 | アマルエット1番 | アムロジピン5mg | アトルバスタチン5mg |
カデュエット2番 | アマルエット2番 | アムロジピン10mg | アトルバスタチン5mg |
カデュエット3番 | アマルエット3番 | アムロジピン5mg | アトルバスタチン10mg |
カデュエット4番 | アマルエット4番 | アムロジピン10mg | アトルバスタチン10mg |
コディオMD | バルヒディオMD | バルサルタン80mg | ヒドロクロロチアジド6.25mg |
コディオEX | バルヒディオEX | バルサルタン80mg | ヒドロクロロチアジド12.5mg |
ザクラスLD | ジルムロLD | アジルサルタン20mg | アムロジピン2.5mg |
ザクラスHD | ジルムロHD | アジルサルタン20mg | アムロジピン5mg |
プレミネントLD | ロサルヒドLD | ロサルタン50mg | ヒドロクロロチアジド12.5mg |
プレミネントHD | ロサルヒドHD | ロサルタン100mg | ヒドロクロロチアジド12.5mg |
ミカトリオ | ー | テルミサルタン80mg、ヒドロクロロチアジド12.5mg、アムロジピン5mg | |
ミカムロAP | テラムロAP | テルミサルタン40mg | アムロジピン2.5mg |
ミカムロBP | テラムロBP | テルミサルタン80mg | アムロジピン5mg |
ミコンビAP | テルチアAP | テルミサルタン40mg | ヒドロクロロチアジド12.5mg |
ミコンビBP | テルチアBP | テルミサルタン80mg | ヒドロクロロチアジド12.5mg |
ユニシアLD | カムシアLD | カンデサルタン8mg | アムロジピン2.5mg |
ユニシアHD | カムシアHD | カンデサルタン8mg | アムロジピン5mg |
レザルタスLD | ー | オルメサルタン10mg | アゼルニジピン8mg |
レザルタスHD | ー | オルメサルタン20mg | アゼルニジピン16mg |