【意識レベル評価】JCS・GCSとは?意識障害時の対応は?

目次

1.JCS・GCSの一覧表

2.JCS・GCSとは?

3.JCS・CGS評価の具体例

4.意識障害の原因

5.意識障害の検査・治療

1.JCS・GCSの一覧表

2.JCS・GCSとは?

意識障害の患者さんでは、その程度や経時的な変化を把握する必要があります。意識状態を客観的に評価するための指標がJCSとGCSです。

JCSとは

JCSとは、Japan Coma Scale(ジャパン・コーマ・スケール)の略です。日本で使用されている意識障害の評価方法です。JCSは0から300の間で表現されます。0が正常な状態で、数字が大きくなるほど、重度の意識障害であることを意味します。

JCSは、まず覚醒度合いによって3段階(1桁、2桁、3桁)に分けられます。さらにその中でも3段階に細分化されることから、「3-3-9度方式」とも呼ばれます。

GCSとは

GCSとは、Glasgow Coma Scale(グラスゴー・コーマ・スケール)の略です。GCSは海外でも広く使用されている意識障害の評価指標です。GCSではE(開眼機能)、V(言語機能)、M(運動機能)の3要素に分けて評価します。E(開眼機能)は1~4点、V(言語機能)は1~5点、M(運動機能)は1~6点で評価します。そのため、E、V、Mの合計点は3~15点になります。健常者は15点、最も重度の意識障害の場合は3点です。GCSは細かく意識状態を把握できますが、JCSと比較して複雑であり、算出に時間がかかるのが難点です。

3.JCS・GCS評価の具体例

問題1

開眼しているが、日時を答えられない。氏名や生年月日は正しく答えられる。四肢は指示に応じて動かせる。この患者のJCSとGCSは何か?

答え:JCS2、GCS14 (E4V4M6)

解説:開眼している点から、JCSは1桁です。日時が答えられない点から、見当識障害ありと判断します。また氏名や生年月日を答えられるため、JCSは3になります。GCSについては、E(開眼機能)は自発的に開眼しており4です。見当識障害があるため、V(言語機能)は4になります。また四肢は指示に応じて動かせる状態であり、M(運動機能)は6になります。

問題2

閉眼しているが、呼びかけにより容易に開眼する。発語は一切ない。左上下肢は指示に応じて動かすが、右上下肢は麻痺があり、完全に動かない。この患者のJCSとGCSは何か?

答え:JCS10、GCS10 (E3V1M6)

解説:閉眼している点から、JCSは2桁です。呼びかけにより容易に開眼するので、JCSは10に決まります。一方のGCSは、E(開眼機能)が3です。発語がない点から、V(言語機能)は1になります。M(運動機能)は、「最良運動機能」で判断するため、右上下肢ではなく、左上下肢で評価します。そのため、M(運動機能)は6になります。

4.意識障害の原因

意識障害の原因によく使われる語呂合わせが、「AIUEOTIPS」です。

意識障害の鑑別「AIUEO TIPS」

「AIUEO TIPS」は、意識障害の鑑別疾患の頭文字を並べたものです。


まずAはAlcoholで、急性アルコール中毒を指します。アルコールを多飲されている方で忘れてはいけない鑑別疾患は、Wernicke脳症です。Wernicke脳症はビタミンB1が不足することにより生じます。ビタミンB1の投与により速やかに改善しますが、治療が遅れると後遺症を残すことがあります。早期に診断して治療しましょう。Wernicke脳症を疑った場合は、ビタミンB1を投与する前に、血液中のビタミンB1濃度を測定することも大切です。


次にIはInsulinのIです。低血糖、高血糖を意味します。低血糖は特に緊急性が高いため、すぐに除外したい疾患です。デキスターで除外します。


UはUremiaで尿毒症です。血液検査で腎機能を確認して判断します。


Eは3つあります。Encephalopathy(脳症)、Endocrinology(内分泌疾患)、Electrolytes(電解質異常)です。Encephalopathy(脳症)は頭部MRIや脳波で除外します。Endocrinology(内分泌疾患)で意識障害を生じるのは、甲状腺機能異常と副腎皮質機能低下です。Electrolytes(電解質異常)のうち、意識障害を起こす頻度が最も高いのはナトリウムの異常です。他にも、カルシウムやマグネシウムの異常も意識障害の原因になります。


OはOxygen(酸素)、Opiate(薬物中毒)です。Oxygenは、低酸素血症のことを指します。意識障害を来すほどの低酸素血症は緊急性が非常に高いと言えます。気道を確保し、酸素投与・補助換気などですぐに対応しましょう。また忘れてはいけないのはCO2の異常です。高二酸化炭素血症ではCO2ナルコーシスになり、意識障害を来します。Opiateは薬物中毒のことです。尿検体を使ったトライエージ®が診断の参考になります。


TはTrauma(頭部外傷)、Temperature(低体温・高体温)です。Trauma(頭部外傷)による頭蓋内出血は頭部CTで診断できます。またTemperature(低体温・高体温)は体温を測れば、すぐに診断可能です。意識障害を来すほどの体温の異常は、患者さんに触れるだけでも分かることがあります。


IはInfection(感染症)です。髄膜炎はもちろん意識障害の原因になります。中枢神経系を感染巣としない肺炎や尿路感染症などでも意識障害を来します。


Pは、Psychiatric(精神疾患)、Porphyria(ポルフィリン症)です。検査の結果、意識障害の器質的な異常がない場合は、Psychiatric(精神疾患)を疑います。またPorphyria(ポルフィリン症)も頻度は少ないですが、意識障害の原因となりえます。


最後のSですが、Stroke(脳血管障害)、Seizure(けいれん)、Shock(ショック)の3つあります。Stroke(脳血管障害)は頭部CTや頭部MRIで判断します。またSeizure(けいれん)はけいれんを目撃されていれば、診断可能です。目撃されていない場合は、徐々に意識が改善してくることが多い印象です。またけいれんがなくても意識障害を来す、「非けいれん性てんかん重積」もここに入れておくとよいでしょう。この疾患は脳波によって診断します。Shock(ショック)は血圧を測定すれば、ほとんどの場合で診断可能です。直ちに循環動態を安定化させるための処置が必要になります。

5.意識障害の検査・治療

 まずはA(気道)、B(呼吸)、C(循環)の確認をします。全く反応がない場合、心停止している可能性もあります。心停止だった場合は、直ちに一次救命処置をします。バイタルサインを含めたABCの確認を行った時点で、意識障害の原因になる「低酸素血症、高二酸化炭素血症、ショック」はある程度鑑別できるはずです。ABCの異常があれば必要に応じて、気道確保、酸素投与・補助換気、循環動態の安定化を行います。

 ABCが問題ないことを確認したら、直ちに行うべき検査は、低血糖除外のための血糖測定です。デキスターを使用すれば、すぐに低血糖を除外できます。もし低血糖があれば、50%ブドウ糖液を投与します。

 続いて、意識障害の原因を探るために採血を行います。血液検査の項目は、「AIUEO TIPS」を参考に考えます。血算、BUN、Cre、Na、Ca、Mg、血糖、NH3、CRP、ビタミンB1、コルチゾール、TSH、血液ガスなどになります。薬物中毒が否定できない場合には、トライエージ®を施行します。引き続き、頭部CTや頭部MRIなどの画像検査に進む流れが一般的です。これでも原因が分からない場合は、髄膜炎を考慮しての髄液検査、非けいれん性てんかん重積除外のための脳波検査を検討します。

ブログ著者・監修者
  • ブログ著者・監修者
  • 上原和幸(循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医)
    日本医科大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターで初期研修(内科プログラム)を行う。その後は循環器内科で勤務。現在、日本医科大学付属病院 総合診療科 助教、日本赤十字社医療センター循環器内科 非常勤医師。
    主な資格:循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医、認定内科医、臨床研修指導医、日本赤十字社認定臨床医、日本病院総合診療医学会認定医、日本旅行医学会認定医。
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