禁煙を成功させるために、禁煙外来を受診することをおすすめします。自分ひとりでチャレンジするより、禁煙外来へ通院したほうが成功率は高くなります。
禁煙を開始すると多くの場合、イライラ、集中力の低下、頭痛、身体のだるさ、眠気が出現します。禁煙時に出現する症状を抑えるためのお薬が禁煙補助薬です。禁煙外来を受診すると、この禁煙補助薬が使用できます。適切に薬を使用することで症状を抑えられ、禁煙の成功率が上がります。
禁煙外来を受診するメリットは、禁煙補助薬を使うことだけではありません。禁煙を成功させるためのアドバイスも受けることができます。
標準的な治療では、12週間に渡り計5回の通院をしていただきます。
禁煙補助薬を開始した後に、禁煙を開始します。
禁煙時に出現する症状を和らげるためのお薬が、禁煙補助薬です。禁煙外来で処方できる禁煙補助薬には、ニコチンパッチとバレニクリン(チャンピックス®)があります。
ニコチン成分が含まれた貼付薬です。身体に貼り付けると皮膚からニコチンが吸収され、ニコチンの離脱症状(イライラ、集中力の低下、頭痛、身体のだるさ、眠気)を抑えます。禁煙後の体重増加を抑制することも期待できます。
ニコチンパッチの貼る場所は、腕やお腹、背中などが一般的です。パッチは毎回異なる場所に貼ったほうが、皮膚のかゆみを抑えられます。毎日の貼り換えが必要で、貼り換えのタイミングは基本的に起床時です。ニコチンの影響で夜眠れなくなる場合には、就寝前に剥がして、翌朝に新しいパッチを貼ります。
ニコチンパッチを使用すると体内にニコチンが吸収されるため、喫煙したいという気持ちが減ります。ニコチンパッチを使用してもなお喫煙欲求が強い場合は、市販のニコチンガムの併用も検討しましょう。
禁煙治療開始時は、ニコチンが多く含まれたパッチを使用します。禁煙が順調に進めば、徐々にニコチン含有量を減らしていきます。パッチなしでも禁煙を継続できることが治療の最終目標です。治療中、頭痛・めまい・嘔気・嘔吐・動悸・冷汗などが出現した際は、ニコチンの量が多いことが考えられます。その際は、ニコチンパッチをすぐに剥がしてください。
バレクリニン(チャンピックス®)は、ニコチン成分を含まない飲み薬です。バレニクリンはニコチンの作用を模倣して、離脱症状を軽減します。再喫煙した場合には、タバコから吸収されるニコチンの作用を阻害し、喫煙で得られる満足感を低下させます。
バレニクリンは、禁煙を始める1週間前から内服する薬剤です。基本的には12週間継続しますが、さらに追加で12週間使用する場合もあります。
バレニクリンの主な副作用には嘔気・嘔吐、便秘、頭痛、異常な夢をみる、眠れないなどがあります。これらの症状は出現しても軽度であることが大半です。特に嘔気は一時的で、自然に消失する場合がほとんどです。
バレニクリンを使用中に、めまい、眠たくなる、意識が悪くなるなどの症状が出現することがあります。そのため、この薬剤を使用している間、自動車運転や危険な作業は控えなければいけません。
初回の診察時に条件を満たしていると医師が判断した場合は、禁煙治療に健康保険が適用されます。健康保険が適用される条件は、次の通りです。
*以下の「ニコチン依存症のスクリーニングテスト」で、10個の質問のうち5個以上で回答が「はい」だった場合に該当します。
健康保険の適用外と判断された場合は、全額自己負担になりますが、同様の禁煙治療を行うことが可能です。
喫煙は肺気腫(COPD)の最大の原因です。喫煙が肺がんの原因になることも有名です。肺がん以外にも咽頭、喉頭、口腔のがんの原因となります。喫煙の影響はそれだけにとどまりません。血管にも影響を及ぼし、動脈硬化のリスクが高まります。狭心症・心筋梗塞、大動脈瘤、脳梗塞などの原因となります。
喫煙の忘れてはならない一面が、「受動喫煙」です。たばこを吸っている本人だけではなく、その周りの人にも喫煙は悪影響を与えます。受動喫煙の影響を最も受けやすいのは、一緒にいる時間の長いご家族です。大切なご家族の方も守るためにも、禁煙することが大切です。
当院は、禁煙のお手伝いをすることができます。禁煙をしようと思われたら、お気軽にご相談ください。
著者上原和幸
循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医。日本医科大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターで初期研修(内科プログラム)を行う。同院循環器内科で勤務後、日本医科大学付属病院 総合診療科 助教に着任。日本赤十字社医療センター循環器内科 非常勤医師を兼務。
主な資格
循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医、臨床研修指導医、日本赤十字社認定臨床医、日本病院総合診療医学会認定医、日本旅行医学会認定医
〒272-0021
千葉県市川市八幡3-26-1 ガレ本八幡1F
047-324-1114
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