Type2心筋梗塞、リスクファクターはType 1とほぼ一致
紹介する論文
急性心筋梗塞は原因によりType1~Type5に大別されます。Type1心筋梗塞は、アテローム性動脈硬化に併発した血栓症による心筋梗塞を指します。Type2心筋梗塞は、アテローム性動脈硬化に併発した血栓症は伴わないものの、心筋の酸素需要と供給のミスマッチにより生じた心筋梗塞と定義されます。つまり、頻脈、貧血、低酸素血症、低血圧などにより二次的に生じたものです。
Type1の心筋梗塞のリスクファクターは、以前から知られています。高血圧、糖尿病、脂質異常症などがその代表格です。しかし、Type2心筋梗塞のリスクファクターについてはまだ明確になっていません。もしリスクファクターが分かれば、それに対する介入を行うことができます。そこで今回は、Type2心筋梗塞のリスクファクターを調査した研究を紹介します。
論文の内容
心筋梗塞の判定
心筋梗塞かの判定は、universal definition(第4版)で行った。
Type1心筋梗塞は、急性冠症候群が疑われ、心筋虚血の症状または心電図所見のいずれかを有する患者において、心筋壊死を伴うもの(hs-cTnI濃度が99%タイル以上で、連続検査を行った場合hs-cTnI濃度の上昇または低下が認められるもの)と定義された。
Type2心筋梗塞は、心筋壊死・心筋虚血の症状または徴候があるもののアテローム性動脈硬化に併発した血栓症の証拠がなく、他の疾患による心筋酸素需要の増加または供給の減少の証拠を有するものと定義した。
研究の対象
スコットランドの病院を受診し、急性冠症候群が疑われて、高感度心筋トロポニンI (hs-cTnI) を測定された患者を対象とした。
1年間の追跡調査を行った48,282例において、hs-cTnI濃度が99%タイル以上であった2839例を抽出した。その結果、Type1心筋梗塞は924例、Type2心筋梗塞は407例だった。1169例が急性心筋障害、77例が慢性心筋障害と診断された。
患者背景
Type1とType2心筋梗塞で、既知の冠動脈疾患(56% vs 58%)、脳血管疾患(12% vs 13%)、脂質異常症(63% vs 67%)、糖尿病(22% vs 21%)の合併率はほぼ同様だった。
しかし、Type2心筋梗塞の方がType1と比較して、やや高齢であり(中央値77歳[IQR 69–83] vs 74歳[IQR 62–83])、腎機能障害を多く伴っていた(44% vs 39%)。
Type2心筋梗塞407例中397例 (98%)で、心筋酸素需要のミスマッチ原因を特定することができた。頻脈性不整脈が50%、低酸素血症が22% 、低血圧が12%、貧血が11%であり、冠動脈性は2%未満、高血圧は2%と少なかった。
Type2心筋梗塞のリスクファクター

赤がType1、青がType2を示す。
多変量モデルでは、年齢、既知の冠動脈疾患、脳血管疾患、脂質異常症、糖尿病、クレアチニン濃度、血行再建の既往のハザード比は、Type1とType2でほぼ同等だった。性別はType1とType2ともに、有意な予測因子にならなかった。
Type1心筋梗塞と以前に診断されていることは、Type1心筋梗塞の最大のリスクファクターだった(調整後ハザード比 5.80, 95% CI 5.06–6.65)。
またType2心筋梗塞と過去に診断されていることは、Type2心筋梗塞の最大のリスクファクターだった(調整後ハザード比 6.18, 95% CI 4.70–8.12)。
考えたこと
Type2心筋梗塞のリスクファクターは、概ねType1と類似していることが示されました。
この結果は、Type2心筋梗塞の患者でもType1の場合と同様に動脈硬化リスクファクターの管理が重要であることを示唆しています。逆に、動脈硬化リスクファクターの管理を行えば、Type1のみならずType2心筋梗塞の予防になる可能性もあります。
また、Type1の後はType1、Type2の後はType2を起こしやすいというのも興味深い発見だと思います。プラーク破裂を起こす人(≒Type1心筋梗塞)は、再度プラーク破裂を起こしやすいとも考えられます。この分野はまだ研究の余地がありそうです。
Type2心筋梗塞のリスクファクター、Type1心筋梗塞とほぼ一致