急性心筋梗塞、入院直後のインフルワクチン接種で予後が改善
紹介する論文
動脈硬化の進展や、プラークの破綻には「炎症」が関与しています。またインフルエンザウイルスに感染するとこの「炎症」が起き、心血管イベントが増えるという報告もあります。
それではワクチンでインフルエンザを予防すれば、心血管イベントは減らせるのでしょうか?それを検証するために、急性心筋梗塞で入院した直後にインフルエンザワクチンを接種するIAMI(Influenza vaccination After Myocardial Infarction)試験が行われました。今回は、このIAMI試験の結果を紹介します。
論文の内容
Patient
12ヵ月以内にインフルエンザワクチンを接種していない、18歳以上の急性心筋梗塞患者
(全体の0.3%だけ、高リスクの安定冠動脈疾患患者を含む)
Intervention
冠動脈造影またはPCI後72時間以内にインフルエンザワクチン接種
Comparison
プラセボ接種
Outcome
1290人がインフルエンザワクチン群、1281人がプラセボ群に割り付けられた。そのうち1272人がインフルエンザワクチン、1260人がプラセボを実際に接種した。
12ヵ月のフォローアップで、主要評価項目である全死亡・心筋梗塞・ステント血栓症はインフルエンザワクチン群67人(5.3%)、プラセボ群91人(7.2%)に生じた(ハザード比 0.72, 95% CI 0.52-0.99, p=0.040)。
全死亡はインフルエンザワクチン群2.9%、プラセボ群4.9%(ハザード比 0.59, 95% CI 0.39-0.89, p=0.010)、心血管死は2.7%と4.5%(ハザード比 0.59, 95% CI 0.39-0.90, p=0.014)、心筋梗塞は2.0%と2.4%(ハザード比 0.86, 95% CI 0.50-1.46, p=0.57)に生じた。

青がインフルエンザワクチン群、赤がプラセボ群。
重大な有害事象は両群で類似していた。ただし、注射部位の疼痛、発赤、腫脹はインフルエンザワクチン接種群で多かった。
考えたこと
急性心筋梗塞で入院した直後にインフルエンザワクチンを接種すると、全死亡・心筋梗塞・ステント血栓症の合計が改善することが示されました。
心筋梗塞の発症数はあまり変化なさそうで、血栓症が減少したわけではなさそうです。インフルエンザ後の肺炎や心不全増悪が減ることで、予後が改善したのでしょうか。そう考えると、急性心筋梗塞例だけではなく、陳旧性心筋梗塞例でもインフルエンザワクチンを接種することが大切そうです。
この研究では、入院72時間以内にワクチンを接種されています。入院直後であり、集中治療管理をされている期間と考えられます。そのような状況でワクチン接種をするというのはなかなか想像しづらいですが、予後は改善できるようです。ただし、そこまで急性期にワクチンを接種する必要があるのかは少し疑問に思いました。
また、この研究はインフルエンザが流行する時期に限定して行われています。そのため、夏場のインフルエンザが流行していない時期では、さすがに有効性に乏しいと思われます。
今後はCOVID-19ワクチンでも同様の研究が行われるのでしょうか?その際は、インフルエンザワクチンと同時接種になるかもしれませんね。
急性心筋梗塞で入院したら、インフルワクチンを接種すべし