虚血領域が比較的大きな脳梗塞でも、血管内治療で予後が改善

紹介する論文

主幹脳動脈閉塞による急性期脳梗塞で、血管内治療はt-PAとともに標準的な治療になっています。中大脳動脈のM1部や内頸動脈に閉塞があり、梗塞巣が大きくなければ、血管内治療を行うことが現行のガイドラインでも推奨されています。

梗塞巣の大きさはAlberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score (ASPECTS)で評価されます。このASPECTSが5点以下の比較的虚血領域が大きい症例では、再灌流時の出血リスクが高いと考えられ、血管内治療の臨床試験からは除外されていました。しかし、観察研究を含むメタアナリシスでは、ASPECTSが5点以下でも機能予後および死亡率の低下につながる可能性が示唆されています。一方、ASPECTSが2点以下の場合は、梗塞巣が広範囲に及び機能的予後が見込めません。

そこで、ASPECTSが3-5点の虚血領域が広い集団でも血管内治療治療が有効かが、日本で検証されました。試験名は、RESCUE-Japan LIMITです。その結果がNew England Journal of Medicineに掲載されたので、紹介します。

Yoshimura Shinichi, et al. Endovascular Therapy for Acute Stroke with a Large Ischemic Region. New England Journal of Medicine. 2022

論文の内容

Patient

18歳以上、発症前のmodified Rankin scale 0-1点、主幹脳動脈閉塞(中大脳動脈M1部、あるいは内頸動脈)による脳梗塞と診断され、虚血領域を示すASPECTSが3-5点、入院時のNational Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS) 6点以上、最終健常確認から6時間以内、または24時間以内かつFLAIRでの早期変化がない患者。

除外基準

脳の容積が増大してmidline shiftを伴っている、脳出血、出血リスクが高いと判断される、など

Intervention

血管内治療+薬物療法

Comparison

薬物療法

Outcome

患者背景

101名が血管内治療群に、102名が薬物治療群にランダムに割り当てられた。

両群間の患者背景は似ており、平均年齢は76歳、女性が43.3%だった。

試験参加時のNIHSSスコアの中央値は22、ASPECTSの中央値は3だった。

47.3%が内頸動脈閉塞で、70.9%が中大脳動脈M1部の閉塞だった。

心房細動は59%に合併していた。

アルテプラーゼが27%に投与されていた。

主要評価項目

90日後のmodified Rankin scaleで0-3点の神経学的予後が良好な患者の割合は、血管内治療群で31.0%、薬物治療群で12.7%であった(相対リスク、2.43; 95% CI, 1.35~4.37; P=0.002)。

各治療群でのmodified Rankin scale scoreの分布。
良好な神経学的予後は0-3点とされる。

安全性評価

48時間以内の頭蓋内出血は、血管内治療群の58.0%、薬物治療群の31.4%に生じた(相対リスク、1.85; 95% CI, 1.33~2.58; P<0.001)。しかし、症候性の頭蓋内出血は両群で有意差がなかった。

考えたこと

急性期脳梗塞の虚血領域が比較的大きい場合でも、薬物療法に血管内治療を追加したほうが、良好な機能的予後が得られることが示されました。また、頭蓋内出血自体は増えたものの、症候性の頭蓋内出血については有意差がありませんでした。

このようなエビデンスを日本から発信できること、さらに医学界で最高峰の雑誌に掲載されること、とても素晴らしいと思います。

下の研究結果からも分かりますが、脳梗塞は時間との勝負です。

 >>移動式脳卒中ユニットの出動で、脳梗塞の予後が改善する

今回の研究対象になるような患者さんを見つけたら、血管内治療の可能な施設に一刻も早く搬送することも重要でしょう。

虚血領域が比較的大きな脳梗塞であっても、脳血管内治療で予後が改善する

ブログ著者・監修者
  • ブログ著者・監修者
  • 上原和幸(循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医)
    日本医科大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターで初期研修(内科プログラム)を行う。その後は循環器内科で勤務。現在、日本医科大学付属病院 総合診療科 助教、日本赤十字社医療センター循環器内科 非常勤医師。
    主な資格:循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医、認定内科医、臨床研修指導医、日本赤十字社認定臨床医、日本病院総合診療医学会認定医、日本旅行医学会認定医。
    ※本サイトは個人で発信しているものです。所属組織の意見を代表するものではありません。