治療抵抗性高血圧でも、減塩・運動療法の継続がやっぱり大切

紹介する論文

高血圧治療の基本は、減塩や運動療法といった生活習慣の改善です。未治療例や降圧薬1・2剤内服下では、生活習慣の改善が降圧に寄与することが示されています。

利尿薬を含む3剤以上を内服しているにも関わらず、収縮期血圧≧130mmHgまたは拡張期血圧≧80mmHgである状態は、治療抵抗性高血圧症と言われます。この治療抵抗性高血圧症でも生活習慣の改善が有用かを検証した研究を紹介します。

Blumenthal J. A, et al. Effects of Lifestyle Modification on Patients With Resistant Hypertension: Results of the TRIUMPH Randomized Clinical Trial. Circulation. 2021;144:1212-26

論文の内容

Patient

①、②のいずれかを満たす患者

①利尿薬を含む降圧薬3剤以上を6週間以上内服しているにも関わらず、収縮期血圧≧130mmHgまたは拡張期血圧≧80mmHgの患者

②収縮期血圧≦130mmHgまたは拡張期血圧≦80mmHgを得るために4剤以上の降圧薬を要する、収縮期血圧≧120mmHgの患者

Intervention

C-LIFE(Center-Based Lifestyle Intervention)群

食生活の相談、運動、行動的な体重管理を含む、4か月間の生活習慣修正プログラム

※カロリー制限とナトリウム制限(2300mg/day以下≒食塩5.8g/day以下)を含むDASH食の指導を栄養士から受ける。食行動を変化させること・個別の問題解決・長期的な行動変化に重点を置いたグループカウンセリングを、臨床心理士から週1回、45分間受ける。さらに30-45分間の運動を、心臓リハビリテーション施設で週3回施行する。

Comparison

SEPA(Standardized Education and Physician Advice)群

※内容はC-LIFE群と一緒だが、1時間の指導を1回だけで終了

Outcome

診察室での収縮期血圧の低下幅は、C-LIFE群 (–12.5 mmHg; 95% CI, –14.9 to –10.2)、 SEPA群(–7.1 mmHg; 95% CI, 10.4 to –3.7)で、C-LIFE群の方が大きく低下していた(p=0.005)。

また24時間自由行動下での収縮期血圧は、C-LIFE群で低下し(-7.0 mmHg; 95% CI, –8.5 to –4.0)、SEPA群では変化がなかった–0.3mmHg; 95% CI, –4.0 to 3.4) (p=0.001).

考えたこと

4か月間の生活習慣改善プログラムを行うことで、治療抵抗性高血圧症であっても血圧が有意に下がることが示されました。

減塩、運動療法をしっかり行うと、降圧薬1剤程度の降圧効果はありそうな結果でした。医学的には大変意味のあると思います。

ところでこの研究で行っている介入は、かなり手間がかかります。実臨床でこの介入を全例に行うことは、あまり現実的ではなさそうに思えます。

しかし、治療抵抗性高血圧症であっても、減塩や運動療法をしっかり行えば血圧が下がることは明らかになりました。全例にこの介入が行えなくても、生活習慣の改善を継続的に促すことが重要と言えるでしょう。

治療抵抗性高血圧でも、減塩や運動療法は重要

ブログ著者・監修者
  • ブログ著者・監修者
  • 上原和幸(循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医)
    日本医科大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターで初期研修(内科プログラム)を行う。その後は循環器内科で勤務。現在、日本医科大学付属病院 総合診療科 助教、日本赤十字社医療センター循環器内科 非常勤医師。
    主な資格:循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医、認定内科医、臨床研修指導医、日本赤十字社認定臨床医、日本病院総合診療医学会認定医、日本旅行医学会認定医。
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