新型コロナウイルス感染症への免疫、いつまで続くのか?持続期間は?

目次

1.なぜ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への免疫の持続期間を知ることが重要か?

SARS-CoV-2というウイルスに感染することで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症します。COVID-19に対する免疫は、SARS-CoV-2による感染、またはワクチン接種により獲得されます。

それではCOVID-19に対する免疫、果たしていつまで持続するのでしょうか?

SARS-CoV-2感染予防効果、COVID-19発症予防効果がどれくらい続くのかは、ワクチン接種時期を考える上で、重要な問題です。

COVID-19に対する免疫は、ワクチン接種状況、今までの感染の有無により変わります。ワクチン接種による免疫は、どのメーカーのワクチンを打ったか(ファイザー製かモデルナ製か)、何回接種したか、接種後どのくらい期間が経過しているか、によっても大きく変化します。

そこで様々な研究論文をもとに、ワクチン接種後の①COVID-19発症予防効果、②SARS-CoV-2感染予防効果、をまとめました。さらに③SARS-CoV-2に一度感染した場合の再感染に対する防御効果もまとめました。

以下のワクチンの有効性を示す数値は、「今までSARS-CoV-2感染歴なし、ワクチン接種なし」と比較した場合のものです。すべて%で表記しています。またカッコ内に示された数字は95%信頼区間を示します。有効性の左に示されている期間は、「各ワクチン最終接種から経過した時間」です。

2.COVID-19発症に対する予防効果の推移

COVID-19発症に対する予防効果の推移を示します。

現在日本で多く使用されているCOVID-19ワクチンは、BNT162b2ワクチン(ファイザー製)、mRNA-1273ワクチン(モデルナ製)です。この2つのワクチンはオミクロン株では有効性が低下します。そのため、デルタ株とオミクロン株で発症予防効果を並べて比較しています。

オミクロン株、COVID-19ワクチンはどれくらいの期間有効か?を基に作成
(Andrews N, Stowe J, Kirsebom F, et al. Covid-19 Vaccine Effectiveness against the Omicron (B.1.1.529) Variant. New England Journal of Medicine 2022)

3.SARS-CoV-2感染に対する予防効果の推移

SARS-CoV-2感染に対する予防効果の推移を示します。またオミクロン株に対するデータはなく、オミクロン株出現以前のデータになります。

コロナワクチン、2回接種だけでは6~9か月後に感染予防効果が消失(Nordström Peter, et al. Risk of infection, hospitalisation, and death up to 9 months after a second dose of COVID-19 vaccine: a retrospective, total population cohort study in Sweden. The Lancet. 2022)、
COVID-19ワクチン、3回目ブースター接種の効果と副反応は?(Bar-On Yinon M. et al. Protection of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19 in Israel. New England Journal of Medicine. 2021;385:1393-400)を基に作成

4.一度SARS-CoV-2に感染した人の、再感染に対する防御効果の推移

過去にコロナに感染したら、ワクチン接種で再感染を1年以上予防可能を基に作成
Hall Victoria, et al. Protection against SARS-CoV-2 after Covid-19 Vaccination and Previous Infection. New England Journal of Medicine. 2022.
※この研究はモデルナ製ワクチンのデータはなし。一部アストラゼネカ製も入っているが、ほぼファイザー製であり、ファイザー製ワクチンを打った場合も同様の数字と考えた。

※ ファイザー製ワクチンを1回のみ接種した場合、2回接種した場合と比較して、感染予防効果はほぼ変化しないことが示されている。

参考:コロナ感染後でも、ワクチン接種をした方が再感染を予防できるHammerman Ariel, et al. Effectiveness of the BNT162b2 Vaccine after Recovery from Covid-19. New England Journal of Medicine. 2022)

5.解釈する上での注意点

①このページでは「COVID-19発症予防効果、SARS-CoV-2感染予防効果」を扱っています。「重症化予防効果」ではありません。一般的に重症化予防効果の方が長く続き、感染予防効果の方が短いとされています。

参考:コロナワクチン、2回接種だけでは6~9か月後に感染予防効果が消失

②COVID-19重症化のリスクが高い人と低い人を比較すると、重症化リスクが高い人の方がワクチンの効果は長続きしないとされています。

参考:コロナワクチンの効果、60歳以上の高齢者・高リスク群で早期に減弱

③「3.SARS-CoV-2感染に対する予防効果」「4.一度SARS-CoV-2に感染した人の、再感染に対する防御効果」は、現在日本での流行の大部分を占めているオミクロン株のデータではありません。オミクロン株では免疫逃避があり、ワクチンの有効性は低下するとされています。

参考:オミクロン株、コロナワクチン2回接種の効果は早期に減弱

   3回目ブースター接種、オミクロン株にも有効だがデルタ株よりは劣る

④一般的に、BNT162b2ワクチン(ファイザー製)とmRNA-1273ワクチン(モデルナ製)を比較すると、モデルナ製の効果が強いとされています。

参考:コロナワクチン、ファイザーとモデルナのどちらがより有効だったか?

また、モデルナ製の方が長期に効果が持続します。

参考:コロナワクチン、2回接種だけでは6~9か月後に感染予防効果が消失

ブログ著者・監修者
  • ブログ著者・監修者
  • 上原和幸(循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医)
    日本医科大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターで初期研修(内科プログラム)を行う。その後は循環器内科で勤務。現在、日本医科大学付属病院 総合診療科 助教、日本赤十字社医療センター循環器内科 非常勤医師。
    主な資格:循環器専門医、総合内科専門医、内科指導医、認定内科医、臨床研修指導医、日本赤十字社認定臨床医、日本病院総合診療医学会認定医、日本旅行医学会認定医。
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