AEDを配置するのは、駅がコストパフォーマンスに優れる
紹介する論文
自動体外式除細動器(AED)を、目にすることは多いかと思います。AEDが普及すると、心停止の予後が改善することが明らかになっています。しかし、AEDを設置するにはお金がかかります。もちろんメンテナンス費用もかかります。そう考えると、どのような場所に配置するのかは重要な問題です。
今回は、東京の駅に配置されたAEDがどれくらい使用され、予後改善に貢献しているのかを調べた論文です。
論文の内容
Patient
18歳以上のバイスタンダーが目撃した、初期波形が心室細動の心原性心停止
Exposure
周囲の人々がAEDを用いて施行した除細動
Comparison
救急隊が施行した除細動
Outcome
1か月後に神経学的転帰が良好だったのは、周囲の人々がAEDを用いて施行した除細動の場合は50.2%、救急隊による除細動の場合は8.6%だった(調整オッズ比11.2, 95% CI 1.43-88.4)。

周囲の人々による除細動が、5年間で101.9症例(95% CI 74.5-129.4)の良好な神経学的予後に寄与したと算出された。良好な神経学的予後1症例を得るために必要なAED数は、全国的に設置するよりも駅に設置したほうが少なかった(2133.4台 vs. 48.5台)。
考えたこと
駅に設置されたAEDが良好な神経学転帰と関連し、かつコストパフォーマンスに優れていることが示されました。
Discussionでも述べられていますが、以下に挙げる駅という特殊な環境が影響していたと思います。①心停止発生数が多い、②初期波形が心室細動であることが多い、③心停止の瞬間を目撃されることが多い、④バイスタンダーによる胸骨圧迫がすぐに開始されることが多い、⑤AEDの配置場所を把握している駅員が救助に参加することが多い。
別の山手線を用いた研究ですが、駅の乗降客数と乗り継ぎ可能な路線数がAEDの使用と関連していたとの報告もあります。

Inokuchi R, et al. Association between railway station characteristics and the annual incidence of automated external defibrillator use in the station: Analysis of data from the Yamanote Line in Tokyo. Resuscitation. 2019;145:79-81.
乗降客数が多い乗り継ぎ駅には、AEDを特に多めに配置すると良さそうです。
駅にAEDを配置するのはコストパフォーマンスに優れる